米国企業研究(CoreLogic)

はじめに

前回の記事では米国最大のタイトル会社であるFirst American Corporation社について紹介しましたが、今回は同社の情報サービス部門だったものが分社化して独立したCoreLogic社についてご紹介します。

CoreLogic社の歴史は「クレジットスコア」抜きには語ることができません。同社の事業はクレジットスコアの誕生とほぼ同時に生まれ、クレジットスコア事業の拡大と歩調を合わせるように発展していきました。

現在、同社は金融機関で培われたクレジットスコアの計算モデルを不動産業界に展開しようと研究を続けています。

クレジットスコアとは

クレジットスコアとは金融機関が融資を行う際に、「融資を受けた借り手がちゃんと借金を返済できるか否か(=借り手の信用力)」を数値化した指標です。

クレジットスコアが登場する以前には金融機関は借り手の信用力調査・審査に膨大な時間とコストをかけていました(理由:借り手の信用力を見誤ると貸し倒れの危険があるため)。一方の借り手側も、金融機関の審査のために迅速に融資が下りない、小口の融資を受け付けてもらえない、などの問題を抱えていました。

クレジットスコアを金融機関が導入することで、小口融資の実行件数が導入前の4倍に増加(信用力調査に要する金融機関のコストが下落したことにより、小口でも融資がしやすくなった)したという調査報告があります。

なお、クレジットスコアは以下のような情報から計算されます。

  • 支払い履歴:債務者が破産、裁判、差し押さえ、および支払遅延を起こしていないか
  • 債務負担:口座残高に対する借金の割合
  • 返済期間:どれくらい長期間返済を続けているか
  • 借金の種類:どのような種類の借金をしているか(分割払い、リボルビング払い、消費者金融、住宅ローンなど)
  • 短期集中的な借金の申込有無:資産状況が悪化している可能性がある

CoreLogicの概要

CoreLogicは、カリフォルニア州アーバインを拠点とする企業であり、情報分析サービスを提供しています。同社は情報分析サービスと並行して、独自の調査を開発し、信用調査、市場予測、不動産、詐欺、規制順守、自然災害、災害予測など、さまざまなカテゴリの分析をしています。2020年時点の同社の売上高は180億円であり、米国の企業番付であるFortune1000にも入っています。

CoreLogicが生まれた時代背景

CoreLogicの前身となる企業が生まれたのは1980年台終盤の米国でした。当時の米国で初めてクレジットスコアが実用化され、金融機関は分析会社からクレジットスコアを購入することで融資業務の標準化、自動化が可能になり、融資業務のコストを劇的に削減することが可能になりました。

実用化当初クレジットスコアを採用していたのはWells Fargo、BankAmerica、Citicorp、などの大手金融機関だけでしたが、1990年代に入ると全米の金融機関に爆発的に採用され始め、97年には米国の約70%の金融機関が何らかの形でクレジットスコアを利用するほど、金融機関の融資業務に必須の存在となりました。

クレジットスコアは当初、個人の借り手の信用力を計算するものでしたが、次第に中小企業などより複雑な借り手の信用力の計算にも活用されるようになっていきました。

CoreLogicの沿革

英米企業のパートナーシップから始まる

CoreLogic社の前身となる会社は1991年に米国オハイオ州に本拠地を置くTRW社という航空宇宙、防衛、情報サービス企業の情報サービス部門が英国のエルゼビア社という不動産情報サービスとパートナーシップを締結したことから始まります。

エルゼビア社は投資家向けに投資リスクに関する情報提供、分析サービス及び分析ツールを提供する先進的なテック企業でした。当時の欧州(特に英国)の分析会社は分析結果を顧客に郵送することが一般的でしたが、エルゼビア社は専用端末を顧客のオフィスに設置し、それを操作すれば即座に分析結果を入手できるデータベースシステムを開発し、英国のリスク分析市場の2/3を独占していました。

一方のTRW社は消費者の行動分析に基づくクレジットスコアの計算に強みを持ち、1980年代のクレジットカードブームとそれに続くクレジットスコアブームに乗って成長し、同事業は当時の米国内におけるクレジットスコア企業の中で5本の指に入るほどの実績を持っていました。またTRW社はクレジットスコア事業で蓄積した膨大な消費者データを活用した不動産事業者向けマーケティング支援事業も行っていました。

両社はエルゼビア社のデータベースシステムとTRW社のクレジットスコア及びマーケティング支援サービスを組み合わせて、当時米国で爆発的に成長していたクレジットスコア業界に進出し、併せて不動産業界でクレジットスコア事業を開拓することを目的にパートナーシップを締結したのです。

クレジットスコア事業の波に乗る

1996年、TRW社の情報サービス部門はエルゼビア社に統合され、その後First American Corporation社に買収され、First American Corporationの情報サービス部門としてサービスを提供していきます。

クレジットスコア計算モデルという武器を持っていた同部門は、First American Corporation社の持つ膨大な不動産取引履歴データを基に消費者のクレジットスコアを算出し、金融機関に販売するようになったのです。同事業は1990年代の時代背景(1990年台にクレジットスコアビジネスが米国金融機関を中心に爆発的に成長したこと)も手伝って大きく成長することに成功し、後述する様々な企業を買収して事業領域の拡大を図りました。

主な買収企業

  • 2003年:不動産データ及び分析技術の取得を目的としてTRANSAMERICA(保険会社)の不動産情報部門を買収
  • 2007年:住宅ローンの不正防止及び担保リスク管理サービスを提供している会社を買収し、情報サービス事業の名前をFirst American CoreLogicと命名

First Americanから分社、不動産業界へ挑戦

2010年にFirst American Corporation社は情報サービス事業をCoreLogic社として分社化し、CoreLogicは独立した会社として歩み始めます。

同社は最大の武器であるクレジットスコア計算モデルの適用範囲を広げようと、多くの企業を買収します。買収のターゲットとなった企業は

  • クレジットスコアに必要な取引情報を大量に持つ企業
  • 直感的な操作を可能とするITシステム開発に強みを持つ企業

でした。これら一連の買収から、CoreLogic社は「金融業界での地位を確立したクレジットスコアを、新たな市場である不動産仲介企業に販売する」という意図を持っていたと考えられます。不動産ローン専用クレジットスコア計算のために、不動産取引情報を獲得し、(金融機関に比べて)大量に存在するクライアントに効率的に情報を届けるためにITシステムを開発しようとしたのです。

主な買収企業

  • 2011年:First Americanが事業を展開していたオーストラリアとニュージーランドで商業用不動産情報を取り扱っていた会社を1億9000万ドルで買収
  • 2011年:金融サービス業界にサービスを提供するシステム開発会社を買収
  • 2013年:災害情報を地図に表示するシステムを持つ会社を買収
  • 2013-18年の間に地図表示に強みを持つIT企業及び災害リスクを計算するモデルを持つ企業を立て続けに12社買収

CoreLogicの事業セグメント

不動産購入ソリューション

住宅市場分析

  • 住宅関連レポート(Corelogic HPI:月次で提供する住宅価格速報、ケース・シラー指数:住宅価格水準を示す指数、その他各種市場データの提供)
  • 住宅ローン関連レポート(住宅ローン滞納率、住宅ローン残高、住宅建築費用、など)
  • 気候変動災害レポート(災害リスク指標の算出、災害による経済損失レポート、など)

不動産流通事業者向けリューション

  • 不動産売買用ポータルサイト(OneHome)
  • 不動産エージェント向け物件管理システム(Matrix, Realist, など)

不動産ローンソリューション

  • 借主分析アウトソーシング:ローン返済管理、借主の収入予測、借主の返済力予測、住宅ローンリスク分析
  • 住宅ローン担保資産価値分析アウトソーシング:自動担保評価システム(複数の指標をもとに担保評価額を自動で計算するシステム)
  • 税金分析アウトソーシング:固定資産税計算システムや税務報告用システムの開発、運用

不動産保険ソリューション

  • 保険引受業務支援システム:ワークフローシステム(保険の引受条件・保険金額・保険料率などを決める一連の業務を支援するシステム)
  • 保険事業者カスタマーサポートシステム:ワークフローシステム、顧客満足度管理システム
  • 災害・犯罪リスク評価:各種自然災害リスク指標・レポートの提供(洪水、鉄砲水、高潮、山火事など)や犯罪レポートの提供